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ここ5年くらいの総務省の取り組みの集大成みたいな行政指導で、通信行政オタク的にはとても興味深い事例です。
データ通信に関して、一定の条件下で帯域制御を行う場合などには、「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」(平成28年3月策定、令和2年3月最終改定)及び事業者団体が定める「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」(平成20年5月策定、令和元年12月最終改定)の内容を踏まえ、その条件の内容を明確に利用者に周知させることが適切であると考えられます。
2,3年ほど前から「無制限」を謳うサービスが増えてきて、総務省が対応を検討しているというのは何度か話題になっていたと思いますが、帯域制御についてもその中で法解釈を整理してガイドラインを改定したばかりでした。
利用者が本件サービスの利用を継続するか解約するかを判断する「動機」になり得る情報(通信制限の対象者の基準)を適切に提供しなかったものと認められることから、「利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項」についての事実の不告知に該当し、法第27条の2第1号(事実不告知の禁止)の規定への違反が認められます。
不実告知の禁止は2015年の法改正で追加された条項ですね。
グッド・ラックが行った通信制限の規模は、「無制限」との文言と著しく乖離しており、利用者の誘引に際して実際の品質より著しく高い品質をうたっていたものと認められます。 このように、利用者を不当に誘引し、契約に至らしめたグッド・ラックの行為は、法第1条の「利用者利益の保護」の趣旨に反するものと考えられます。
これって景品表示法で定める優良誤認の定義そのものなんですよね。しかし、電気通信事業法には同様の行為を禁止する条項がないので、法第1条の「利用者利益の保護」の趣旨に反するという法理を持ち出している。行政法の第1条にお約束のように置かれる目的規定を根拠に行政指導するというのはかなりのレアケース(私の記憶する限りでは初めてのこと)だと思います。普通に考えたら法第29条の12に基づいて~と言えば済む話なので。消費者庁の担当分まで総務省が指導している、そんな印象です。
完全に悪いお手本ですな。総務省に電気通信事業者取り消し食らう前にキャリアから接続拒否られて事業断念する気がする。
そこがまた闇の深いところなんですが、グッド・ラック(MVNO)は直接キャリア(MNO)と直接接続していたわけではなく、販売代理店(MVNE)を通じてSIMを調達していたので、事実上、接続拒否のしようがありません。詳しい仕組みは「石野純也のMobile Eye」で解説されています。
石野純也のMobile Eye: “無制限ルーター”のトラブルはなぜ起きた? サービスの仕組みと障害の原因に迫る [itmedia.co.jp]
また、グッド・ラックは行政指導を受けた発表PDF [good-luck-...tion.co.jp]の中で
根本的な問題としては、総務省の指摘にございますように、「どんなときもWiFi」における通信設備の仕組みや潜在的な事業リスクを卸元電気通信事業者(キャリアや兼松コミュニケーションズ株式会社等)との契約の関係で正しく認識できる状態になかったこと、不具合が発生した際に、卸元電気通信事業者である各社との綿密な連携を図るために、あるべき体制を構築できていなかったことが原因としてございます。
と、これまで名前の伏せられていた卸元電気通信事業者が「兼松コミュニケーションズ」であったことを暴露しています。先の記事と合わせて考えると、キャリアが法人向けに提供している大容量SIMを、容量無制限と偽ってMVNO各社に卸したり、キャリアからSIMの供給を停止された代理店というのは、兼松コミュニケーションズのことではないかと囁かれているのです。
兼松コミュニケーションズといえば、3キャリアのキャリアショップを運営する代理店で、今年1月にドコモショップが客を「クソ野郎」などと称する社内メモを作成、誤って客に渡して発覚 [it.srad.jp]したり、今年5月に総務省から電気通信事業法に基づく端末代金の値引きの適正化に関する行政指導 [soumu.go.jp](違反件数トップ)を受けていたりと不祥事が続いています。
仮に兼松コミュニケーションズが真の黒幕だとすれば、グッド・ラックだけを指導して済む話ではないので、総務省が「第三者による検証を行い、再発防止に向けた教訓等の整理等を行う予定」としているのも、そうした背景にメスを入れるためではないかと考えられます。
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人生unstable -- あるハッカー
ジャーナルに1本書けるくらい (スコア:5, 興味深い)
ここ5年くらいの総務省の取り組みの集大成みたいな行政指導で、通信行政オタク的にはとても興味深い事例です。
2,3年ほど前から「無制限」を謳うサービスが増えてきて、総務省が対応を検討しているというのは何度か話題になっていたと思いますが、帯域制御についてもその中で法解釈を整理してガイドラインを改定したばかりでした。
不実告知の禁止は2015年の法改正で追加された条項ですね。
これって景品表示法で定める優良誤認の定義そのものなんですよね。しかし、電気通信事業法には同様の行為を禁止する条項がないので、法第1条の「利用者利益の保護」の趣旨に反するという法理を持ち出している。行政法の第1条にお約束のように置かれる目的規定を根拠に行政指導するというのはかなりのレアケース(私の記憶する限りでは初めてのこと)だと思います。普通に考えたら法第29条の12に基づいて~と言えば済む話なので。消費者庁の担当分まで総務省が指導している、そんな印象です。
Re: (スコア:0)
完全に悪いお手本ですな。
総務省に電気通信事業者取り消し食らう前にキャリアから接続拒否られて事業断念する気がする。
Re:ジャーナルに1本書けるくらい (スコア:5, 参考になる)
そこがまた闇の深いところなんですが、グッド・ラック(MVNO)は直接キャリア(MNO)と直接接続していたわけではなく、販売代理店(MVNE)を通じてSIMを調達していたので、事実上、接続拒否のしようがありません。詳しい仕組みは「石野純也のMobile Eye」で解説されています。
石野純也のMobile Eye: “無制限ルーター”のトラブルはなぜ起きた? サービスの仕組みと障害の原因に迫る [itmedia.co.jp]
また、グッド・ラックは行政指導を受けた発表PDF [good-luck-...tion.co.jp]の中で
と、これまで名前の伏せられていた卸元電気通信事業者が「兼松コミュニケーションズ」であったことを暴露しています。先の記事と合わせて考えると、キャリアが法人向けに提供している大容量SIMを、容量無制限と偽ってMVNO各社に卸したり、キャリアからSIMの供給を停止された代理店というのは、兼松コミュニケーションズのことではないかと囁かれているのです。
兼松コミュニケーションズといえば、3キャリアのキャリアショップを運営する代理店で、今年1月にドコモショップが客を「クソ野郎」などと称する社内メモを作成、誤って客に渡して発覚 [it.srad.jp]したり、今年5月に総務省から電気通信事業法に基づく端末代金の値引きの適正化に関する行政指導 [soumu.go.jp](違反件数トップ)を受けていたりと不祥事が続いています。
仮に兼松コミュニケーションズが真の黒幕だとすれば、グッド・ラックだけを指導して済む話ではないので、総務省が「第三者による検証を行い、再発防止に向けた教訓等の整理等を行う予定」としているのも、そうした背景にメスを入れるためではないかと考えられます。